カネを積まれても使いたくない日本語
お客様からお借りした内館牧子さんの「カネを積まれても使いたくない日本語」です。
昨今の日本語の乱れについて、一般の方のアンケートや専門家の見解を織り交ぜながら説明していく構成なのですが、なかなか興味深い内容です。普段自分でも何気なく使っている表現が(例えば~させて頂く)指摘されていたりするとハッとさせられます。
第3章では「断定回避」の乱用が挙げられているのですがいくつかご紹介しましょう。
「~かな」
例 福島が早く元に戻ればいいかなと思う
いい思い出になったかなと思う
「~のほう」
例 ご注文のほう、お決まりですか?
簡易書留のほうで発送のほうをさせて頂きます
「~的」
例 私的には感じ悪い的な
うーむ、こうして見てみると知らず知らずのうちに使っていそうです。内館さんは、この表現を「常に相手に気をつかい、へりくだり、断定しない現代人の生きにくさを表しているのかもしれない」と論じています。巷でよく言われる「空気を読む」に通じるものがありますね。
ただ私はこの表現の奥に、現代人のもう一つの特性が隠されているように思えます。これはネットの世界で顕著なのですが、自分の意見は絶対に正しい、自分の意見が分からない相手が馬鹿だ、という歪んだ自意識です。表面上はあたかも気をつかい空気を読んでいるかのような表現を使いながら、内心では「こっちの本心をちゃんと分かれよ、馬鹿が」という他者蔑視が裏にある気がするのは私だけでしょうか。
内館牧子「カネを積まれても使いたくない日本語」http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15092